オーデック製品のご試用等、小量単位の製品通販サイト

トップ > コラム > 世界統一のうた (2002年9月記)

コラム

あ・ら・か・る・と

世界統一のうた (2002年9月記)

ニューヨークで同時多発テロが発生してから一年すぎた。
このテロで、かつて富士銀行馬込支店に勤務し、仕事の関係で面識のあった一人の前途有為な銀行員が死んだ。この小文は彼へのレクイエムである。
テロの直後、貿易センタービルで被害にあった日本人ビジネスマンの名前が発表され、富士銀行関係の行方不明者の中に小瀬勝さんの名前があった。
小瀬さんは、しばらく富士銀行の馬込支店で、外回りをやっていて、当社も担当していたから、月に一、二度は会う機会があった。

一般に銀行員は職業柄、紳士的な反面没個性で、あまり印象に残らないのだか、彼は珍しく個性的で、感激性があったので、鮮明に記憶に残っている。
そもそも出身大学が東京外語大で、専攻がバングラディッシュ語という、およそ銀行員らしくない経歴に興味をそそられた。 「どうして銀行に入ったのか。商社ならバングラディッシュ語も生かせるだろうけど」と率直にきいたら「バングラディッシュ語を専攻しましたが、英語が得意なので、銀行の海外部門に進んで海外で仕事がしたいのです」という答えだった。 銀行の外回りは融資や大口預金、海外送金など、企業の要望や相談に応じるのが仕事だけど、コミュニケーションを深めるための雑談も仕事のうちである。
私事で恐縮だが、子供のころ東京外語の学生だった叔父貴がいて、外語の「世界統一のうた」というのを教えてくれた。
「赤い血潮で日の丸染めて、世界統一してみたい」ではじまって、何節目かに「万里の長城で小便すれば、ゴビの砂漠に虹が立つ」というのがあって、当時万里の長城とゴビの砂漠の位置関係がわかななくて、歌詞の意味が理解できなかったが、数年前八達嶺の万里の長城に立ち、ガイドから「あすこがゴビの砂漠ですよ」と指さされて、何十年ぶりかにその疑問が氷解したことがある。その経験を小瀬さんに話したら「外語のうたを知っておられるなんて実にうれしい」と予想外に感激していた。
「世界統一のうた」にはほかに「ギャング絶えたるシカゴのまちに高くあがった鯉のぼり」などという節もあり、戦前の帝国主義丸出しではあるが、どことなくユーモラスなので、いまでもうたわれるらしい。大学公認の校歌,応援歌などと違う、○○大学数え歌とか豪気節と同じ範疇の学生愛称歌として長寿を保っているのだろう。


銀行の総合職は2年くらいで転勤するので、彼もほぼ2年で転勤したが、転勤のあいさつにきた小瀬さんは、こんど「海外業務のほうにかわることができました」とひどく嬉しそうだった。それからしばらくして、富士銀行馬込支店のカウンターにいた杉山さんという利発でキュートな女子行員が小瀬姓にかわった。そういえば、どういうわけかよく彼女の話をしていたなと、ほおえましく思ったものである。
去年の春に銀行でご夫婦の消息を尋ねたら、いまニューヨーク勤務で、子供もできて張り切っているということだった。しかし、その矢先のテロで彼の夢も希望も平和で楽しい家庭も一瞬のうちに消滅してしまった。
ことし4月に富士銀行馬込支店はみずほ銀行大森支店馬込出張所になって、外国為替課のあった2階はいま貸し金庫である。まことにもって有為転変。
「俺が死んだら三途の川で、鬼を集めて相撲とる」が世界統一のうたの〆である。好漢の冥福を祈る。(K)

ページの先頭へ戻る

製品に関するお問い合わせ・お見積りなどお気軽にご連絡ください 03-3774-5259 営業時間 09:00~17:00 土/日/祝日は定休

WEBからお問い合わせ